セフトリアキソンとランソプラゾール併用による心室性不整脈および心停止リスクの増加について

Concomitant use of lansoprazole and ceftriaxone is associated with an increased risk of ventricular arrhythmias and cardiac arrest in a large Japanese hospital database

Open AccessPublished:June 17, 2024DOI:https://doi.org/10.1016/j.jinf.2024.106202

目的

本研究の目的は、セフトリアキソンと経口または静脈内ランソプラゾールの併用が、日本における実際の臨床環境で心室性不整脈および心停止のリスクを増加させるかどうかを調査することです。セフトリアキソンは幅広い抗菌活性を持ち、様々な感染症の治療に広く使用されています。一方、プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、胃食道逆流症や潰瘍性食道炎などの治療に使用される一般的な薬剤です。しかし、これらの薬剤の併用が心臓に与える影響については、未だ十分に理解されていません。

方法

2014年4月から2022年8月までの期間にわたり、JMDC病院ベースの行政請求データベースから得られたデータを分析しました。セフトリアキソンまたはスルバクタム/アンピシリンを投与されながらPPIを使用した患者を特定し、心室性不整脈および心停止の発生頻度を分析しました。Fine–Gray競合リスク回帰モデルを使用して、各グループ間の発生率を比較しました。

結果

結果は明確でした。経口ランソプラゾールを併用した場合(ハザード比2.92、95%信頼区間1.99–4.29、P < 0.01)および静脈内ランソプラゾールを併用した場合(ハザード比4.57、95%信頼区間1.24–16.80、P = 0.02)において、心室性不整脈および心停止のリスクが有意に高いことが示されました。このリスクは、スルバクタム/アンピシリンとランソプラゾールを併用した場合に比べて顕著でした。

結論

本研究の結果は、セフトリアキソンを投与されている患者において、経口および静脈内ランソプラゾールの使用が心室性不整脈および心停止のリスクを増加させる可能性があることを示唆しています。臨床現場では、これらの薬剤を併用する際には注意が必要です。

考察

セフトリアキソンとランソプラゾールの併用がQTc延長を引き起こすメカニズムは、hERGチャネルのブロックによるものです。これにより、心筋細胞の活動電位が変化し、不整脈のリスクが高まると考えられます。これまでの研究でも、ランソプラゾールが他のPPIと比較してQT延長のリスクが高いことが報告されていますが、本研究は日本の実臨床データを用いてこのリスクを具体的に示した点で重要です。

今後の展望

さらなる研究が必要です。特に、他のPPIや抗生物質との比較研究、異なる投与経路や投与量の影響を詳しく調査することで、より安全な治療法の確立が期待されます。また、患者の個別のリスク要因を考慮した上での薬剤選択が重要となります。医療従事者は、患者の安全を最優先に考え、慎重に薬剤を選択することが求められます。

最後に

本研究は、セフトリアキソンとランソプラゾールの併用が心室性不整脈および心停止のリスクを増加させる可能性を示しています。臨床現場での薬剤選択において、このリスクを十分に考慮することが必要です。患者の安全を守るため、医療従事者は常に最新のエビデンスに基づいた判断を行うことが求められます。

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