Long COVID-19

Authors: E. Wesley Ely, M.D., M.P.H. https://orcid.org/0000-0003-3957-2172, Lisa M. Brown, M.P.H., and Harvey V. Fineberg, M.D., Ph.D., for the National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine Committee on Examining the Working Definition for Long Covid*Author Info & Affiliations

Published July 31, 2024

DOI: 10.1056/NEJMsb2408466

長期COVID-19(Long Covid)の定義とその背景(2024年NASEM定義)

COVID-19パンデミックは、急性の感染症として多くの命を奪いましたが、その後、慢性的で障害を伴う症状として「長期COVID-19(長期コロナ)」という状態が広がりました。アメリカだけで約7%の成人と1%以上の子供たちが長期COVIDを経験しているとされています。この新しい病態に対する統一された定義はまだ存在せず、NASEM(米国科学アカデミー)が2024年に新しい定義を策定しました。

定義の策定プロセス

NASEMの委員会は、以下の5つの基準に基づいて定義を策定しました:

  1. 正確性と精度: 症状や疾患の特定が正確であること。
  2. 適用可能性: 定義が現実的に使われること。
  3. 受け入れ可能性: 患者や専門家に受け入れられること。
  4. 理解可能性: 定義が理解しやすいこと。
  5. 利益と害のバランス: 健康の公平性を含む、潜在的な影響を考慮すること。

これには、患者、医療従事者、研究者など1300人以上の意見が取り入れられました。

2024年NASEM定義の内容

長期COVIDは、SARS-CoV-2感染後に発生し、少なくとも3ヶ月以上続く病態で、1つ以上の臓器系統に影響を与えると定義されています。以下の特徴が含まれます:

  • 症状: 呼吸困難、疲労、記憶障害、頭痛など。
  • 診断可能な条件: 心疾患、認知障害、自己免疫疾患など。
  • 重要な特徴:
    • 無症状、軽症、または重症の感染後にも発症することがある。
    • 子供と大人、全ての社会的背景を持つ人々に影響を及ぼす。
    • 症状は軽度から重度まで様々で、数ヶ月から数年続くことがある。
    • 現在のところ、診断に確定的なバイオマーカーは存在しない。
    • 日常生活や仕事に大きな影響を及ぼす可能性がある。

用語と比較

  • 用語: 「長期COVID」という患者が作った用語が採用され、専門的な用語は避けられました。
  • 比較: 2024年の定義は他の定義と比較して広範で包括的であり、長期COVIDの症状や診断可能な条件を詳細に記述しています。

制限と結論

  • 制限: 確定的なバイオマーカーの欠如や診断の特異性の低さなどが挙げられます。
  • 結論: この定義により、患者とのコミュニケーションが改善され、長期COVIDの影響の追跡や治療法の研究が進むことが期待されています。

この定義は今後3年間で見直される予定で、科学的知見の進展に応じて更新されるでしょう。

用語の定義

長期COVID(Long Covid): SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)感染後に発生し、少なくとも3ヶ月以上続く慢性の病態で、1つ以上の臓器系統に影響を与える状態を指します。以下の特徴を持つことが含まれます:

  • 病態: 感染からの回復後も続く病的状態。
  • 症状: 多様で、様々な臓器系統に影響を及ぼす症状が含まれる。
  • 診断: 現在のところ、診断を確定するためのバイオマーカーは存在しない。

7つの重要な特徴

  1. 感染の程度に関係なく発生:
    • 無症状、軽度、または重度のSARS-CoV-2感染後に発症することがあります。
  2. 症状の出現時期:
    • 急性感染からの回復後すぐに症状が現れることもあれば、回復後数週間または数ヶ月後に症状が遅れて現れることもあります。
  3. 年齢や健康状態に関係なく影響:
    • 子供や大人、健康な人や障害を持つ人、全ての社会的背景を持つ人々に影響を及ぼします。
  4. 既存の健康状態の悪化または新たな健康状態の発現:
    • 既存の疾患を悪化させることもあれば、新しい疾患を引き起こすこともあります。
  5. 症状の重さと持続性:
    • 症状は軽度から重度まで幅があり、数ヶ月から数年にわたって持続することがあります。
  6. 診断方法:
    • 現在のところ、長期COVIDを確定的に診断するバイオマーカーは存在しません。診断は臨床的な判断に依存します。
  7. 機能的障害の影響:
    • 長期COVIDは、仕事、学校、家庭のケア、自己管理に大きな影響を及ぼし、患者、家族、介護者に深刻な感情的および身体的影響をもたらします。

主な症状

  1. 呼吸器系の症状:
    • 息切れ
  2. 疲労感:
    • 持続的な疲労
    • 努力後の症状の悪化(postexertional malaise)
  3. 認知的問題:
    • 集中困難
    • 記憶障害
    • 「脳雲(brain fog)」と呼ばれる状態
  4. 神経系の症状:
    • 頭痛
    • 眩暈
    • 神経痛
  5. 心血管系の症状:
    • 速い心拍数
    • 不整脈
  6. 消化器系の症状:
    • 腹部膨満感
    • 便秘
    • 下痢
  7. 嗅覚・味覚の問題:
    • 味覚や嗅覚の問題
    • 味が変わる、または失われる
  8. 睡眠障害:
    • 睡眠の質の低下
    • 不眠症
  9. 筋骨格系の症状:
    • 筋肉痛
    • 関節の痛み
  10. 心理的な症状:
    • 不安
    • 抑うつ

これらの症状は1つまたは複数の臓器系統に影響を与え、個人によって異なる場合があります。また、症状は時間とともに変動することがあり、急激な悪化や改善を繰り返すこともあります。

診断のプロセス

  1. 症状の評価:
    • 医療提供者は、長期COVIDに特徴的な症状の詳細な評価を行います。これには、呼吸器系の問題、疲労感、認知的問題、神経系の症状などが含まれます。
  2. 病歴の確認:
    • 患者の病歴、特に過去のSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)感染歴を確認します。感染の有無に関わらず、症状が続いている場合は長期COVIDを考慮します。
  3. 診断基準の適用:
    • 症状の持続期間: 症状が少なくとも3ヶ月以上続いていることが要求されます。
    • 症状の多様性: 多くの臓器系統にわたる症状が見られること。
  4. 除外診断:
    • 他の可能性のある疾患や状態を除外するための検査や評価が行われます。これは、長期COVIDの症状が他の病状によるものでないことを確認するためです。
  5. 検査と評価:
    • 血液検査: 炎症マーカーや免疫関連の検査が行われることがありますが、長期COVIDの診断を確定するための特異的なバイオマーカーはありません。
    • 画像診断: 胸部X線やCTスキャンなど、臓器の状態を確認するための画像診断が行われることがあります。
    • 機能検査: 呼吸機能テストや心電図など、特定の臓器系統の機能を評価する検査が実施されることがあります。
  6. 専門的な評価:
    • 必要に応じて、呼吸器科、神経科、心臓科など、専門医による追加の評価が行われることがあります。
  7. 診断の確定:
    • 症状の特徴、病歴、除外診断の結果に基づいて、長期COVIDと診断される場合があります。診断は医療提供者の臨床的判断に依存します。

診断のポイント

  • 症状の持続性と多様性: 長期COVIDの診断には、症状が長期間続き、かつ多様な臓器系統にわたることが重要です。
  • 除外診断の重要性: 他の疾患や状態による症状でないことを確認するための除外診断が必要です。
  • 臨床的判断: 現在のところ、確定的なバイオマーカーがないため、診断は臨床的な判断に依存します。

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